Interview

カネジュウ食品

13代目

稲森律子

創業は正徳元年(1711年)。「禅」というブランドを商品に掲げる味噌製造販売会社。「禅」には「ものづくりの本質と向き合う」という想いが込められています。駿河の地味噌「あいじろ味噌」を現在も守る唯一の会社です。

焼津の網元探検隊が、13代目である稲森律子さんにお話を伺いました!

【原田】

ご経歴を教えてください!

【稲森】

私は3姉妹の次女ですが、姉も私も家業を継ぐ気はありませんでした。

大学卒業後、タイヤ関連の事業会社に就職。経験を積ませるために出された現場で、原料や素材に触れることがとにかく面白かったのですが、30歳手前で本社に戻されました。もう現場には戻れないというのが淋しくて。後継者がいないということもありましたが、家に戻れば現場があるというのが魅力で、家業を継ぐ決断しました。

『手間暇がかかるので、現在、唯一うちだけが作るのみ』

【原田】

今後のこと、少し教えてください!

【稲森】

あいじろ味噌は、戦国時代に今川義元を頼り、京から静岡へ移った公家達に向けて作られた京風の味噌が原型。白味噌と田舎味噌の特徴を「相伴う」ことから「相白(あいじろ)」。貴重な地域資源ですが、手間暇がかかるので、現在、唯一うちだけが作るのみです。

しかし近隣のスーパー等では県外のものが並び、うちの商品他、地場の味噌が置かれないといった傾向にあります。だから私が入社した頃は、皆さん「ふーん。そんなものがあるの?」といった反応しかなかった。店の者もみな、「昔から作っているってだけだから…」というスタンス。

でも私も、異業種から来た社員も、うちの歴史や“唯一のメーカー”であることを、「もっと誇ってもいいんじゃないか?」って思っていて。

「静岡あいじろみその 静岡みそ汁の素」はそんな想いで作りました。

今はみんな生味噌は欲しがらないでしょう(笑)?でも即席の味噌汁なら皆さんに美味しさを分かっていただける。

一般消費者の方に向けての試食やSNSでの情報発信を地道に重ねていきました。テレビでも紹介され、徐々に注目されて。でも開発当時からファンになって頂いている方々は、「私たちはもう、“おいしい”って知ってるもんね~」って。そんな風に言ってもらえることが本当に嬉しかった。「一般のお客様と私たち企業が直接関わるのって結構楽しいじゃん!」って思うようになりました。だから今は一般のお客様に直接商品を知って頂くために何をすべきかを考えています。

十三代目

カネジュウ食品株式会社

私たちの創業は江戸時代中期の正徳元年(1711年)です。

田尻屋利兵衛という人物が旧東海道筋(新通り)で味噌・醤油を造り始めたのがカネジュウの始まりです。今川義元をルーツとする駿河(静岡県中部地方)の地味噌「あいじろみそ」の、現存する唯一の製造元であり、受け継がれた伝統の麹技術を活かした金山寺やあま酒を全国に展開しています。

【屋号について】
正徳元年に創業、昭和10年に前身である株式会社稲森商店を設立しました。

その後昭和46年にカネジュウ食品株式会社に社名を変更していますが、屋号に関する文献が残っておらずその由縁は今も不明です。